高次脳機能障害の治療費を請求できるか?
高次脳機能障害は、治療が長期にわたることもあり、治療費が高額になってしまうこともあると思います。
その場合、高次脳機能障害の治療費の負担がどうなるのかについて不安に思われる方も多いのではないでしょうか。
このページでは、高次脳機能障害の治療費の負担や相手方への請求について解説していきます。
高次脳機能障害の治療の方法・期間は?
高次脳機能障害の治療方法
高次脳機能障害の治療は、その症状に対応したリハビリテーションにより行います。以下、代表的な症状に対する治療方法をいくつかご紹介します。
記憶力に問題が出てしまう記憶障害に対しては、記憶してもらう課題を繰り返し出す反復訓練や、患者に残っている視覚等の能力を応用して訓練する内的記憶戦略法、日常生活の支障を減らす環境調整法等があります。
周囲からの刺激に適切に対応できない注意障害に対しては、間違い探しや辞書調べ、パズルを解く等のリハビリ療法を行います。
物事を論理的に考えたり、計画を立てたりすることができない遂行機能障害に対しては、マニュアルを渡してその通りに作業をさせる、自分の行動をフィードバックさせる、組み立てキッドを作成させる等のリハビリを行います。
一般的な治療期間
高次脳機能障害の程度や症状は非常に様々であり、また完治しないことも多いことから、治療期間を一般化することは困難です。
もっとも、高次脳機能障害の治療は、発症日から2年を超えるとほとんど回復せず、症状が固定する可能性が高いと言われています。
逆にいえば、発症後2年目までは、その程度はさておき回復する余地が残されているため、治療期間は2年程度と考えることもできるでしょう。
治療が中断された場合の対応
医師によっては、発症後2カ月ほどで、回復の見込みがないとして治療を中断してしまうことがあります。
しかし、治療期間が2~3か月などあまりにも短いと、後遺障害等級の認定がなされないことがあります。治療期間が短いと症状の改善の余地があると判断され、永続的な後遺障害が残ったと判断されないことがあるためです。
目安としては、後遺障害の申請を行うまでに少なくとも半年~1年以上治療を継続される必要があるでしょう。
後遺障害等級の認定を受けなければ、加害者等に損害賠償請求をしていくことが困難になります。そのため、万が一治療を早めに中断されてしまった場合には、転院をして他の医師に診てもらうことも検討するべきでしょう。
(まとめ)
高次脳機能障害の治療方法 | 症状により様々 直接的に能力を向上させるためのリハビリや、周辺の環境を整備する方法等がある |
---|---|
一般的な治療期間 | 回復が見込めるのが2年間であるため、2年間と考えることが可能 |
治療が中断された場合の対応 | 早期の中断の場合には、後遺障害等級認定に悪影響なため、転院も検討するべき |
高次脳機能障害の治療費の負担は?
高次脳機能障害の治療費は誰が負担するの?
高次脳機能障害の治療費負担は、状況によりかなり異なってきます。
まず、加害者がいる事件や事故により高次脳機能障害を負ってしまった場合には、その加害者に治療費分を請求することができます。
さらに、交通事故の場合には、加害者が保険に加入している場合も多く、その場合には加害者側の保険会社に請求することができます。
また、勤務中や通勤中に高次脳機能障害の原因の事故等に遭った場合、労災保険から治療費の支給を受けることができます。
治療費には健康保険を利用できるの?
治療費に健康保険を利用することはできます。
病院によっては、「交通事故の場合には健康保険は使えない」と言ってくる場合もありますが、そんなことは全くありません。
一部の病院では、健康保険を利用せず、自由診療で治療をした方が、保険会社から割高な診療報酬を得ることができるため、健康保険は使えないということがあるようです。
もっとも、交通事故のような第三者の行為により怪我をして治療をする場合には、後に健康保険組合に「第三者行為による傷病届」を提出する必要があります。
自由診療と保険診療はどう違うの?
自由診療と保険診療の違いは、健康保険を利用するかしないかの違いです。
まず、保険診療は、健康保険を利用しての診療です。保険診療の場合、患者の負担は治療費の3割になります。また、治療はその内容により点数が決められていますが、保険診療の場合には1点あたり12円と、治療費が決められています。
自由診療
は、健康保険を使わないで診療をすることです。この場合、患者は治療費の10割を負担しなければならない上、点数当たりの料金も各病院が1点当たり20円~30円など自由に決定できるため、治療費が割高になります。
労災事故での治療費はどのようにして支払われるの?
労災保険から治療費を受け取る方法は2つあります。
1つ目は、労災指定病院で治療を受ける方法で、2つ目は、指定された以外の病院で治療を受け、後に療養補償給付という申請を労災保険にする方法です。
労災指定病院で治療を受ける場合、その治療費は労災保険が負担してくれるため、治療費を支払う必要はありません。
指定病院以外で治療を受ける場合には、とりあえずの治療費は患者が支払う必要がありますが、療養補償給付申請を行えば、治療費分の費用が患者に給付されます。
(まとめ)
高次脳機能障害の治療費負担 | 状況により、加害者や加害者の保険会社、労災保険など様々 |
---|---|
治療費への健康保険の適用の可否 | 可能 |
自由診療と保険診療の違い | 健康保険の利用の有無 自由診療の場合、患者が治療費を全額負担する上、点数当たりの料金も医者が決められるため、治療費が高額に |
労災事故での治療費の支払い方法 | 労災指定病院での治療なら、患者は治療費を支払う必要なし それ以外なら、患者が費用を立て替え、労災保険に申請をして給付を受ける |
高次脳機能障害の治療中に弁護士に相談すべき?
高次脳機能障害の治療方法は損害賠償にどう影響するの?
高次脳機能障害の治療方法は、後の損害賠償請求に大きな影響をもたらします。
まず、治療を受ける病院の種類が影響します。適正な後遺障害等級の認定を受けるためには、まず脳神経外科にかかることが必要です。
適正な後遺障害等級認定のためには、レントゲンやMRI等の画像所見が重要になります。そして、後遺障害等級が高いほど、損害賠償額も大きくなるのが実務上の取り扱いとなっています。
このような画像を撮影する設備は精神科にはないため、脳神経外科にかかりましょう。
また、自由診療か保険診療かという点は、損害賠償の金額に影響が及びます。自由診療である場合には、治療費が高額になるため、被害者に過失がある事故では治療費の自己負担分が増えるためです。
後遺障害認定に備えて治療期間中にすべきことは?
後遺障害認定に備えて治療期間中にすべきことは、大きく分けて2つあります。
1つ目は、担当医との信頼関係を構築することです。
高次脳機能障害で後遺障害等級認定の申請をする場合、担当医の診断書に加え、意見書(「神経系統の障害に関する医学的意見」)を添付することになります。
後遺障害等級の認定は、この医者からの添付書類の内容で大きく左右されます。また、高次脳機能障害で必要となる書類は比較的多いため、医者にとっても大きな負担になります。
そのような書類に充実した内容を記載してもらうためには、医者との信頼関係が不可欠なのです。
2つ目は、ご家族が日ごろから高次脳機能障害になってしまった本人のことを観察しておくことです。
高次脳機能障害で後遺障害等級の申請をする場合、添付書類の一つとして、「日常生活状況報告」という書類を提出する必要があります。
この書類は、本人の日常での生活態様や支障の有無等を申告する書類ですので、日常的に観察をしていないと十分に書くことができません。
治療期間中から本人の生活を観察して、「日常生活状況報告」を充実させることが、適正な後遺障害等級認定に繋がります。
治療期間中であっても弁護士に相談すべき?
治療期間中であっても、できるだけ早く弁護士に相談をしておくべきでしょう。
適正な損害賠償を受け取れるか否かは、適正な後遺障害等級の認定を受けることができるかによる部分が大きいところ、適正な後遺障害等級の認定の可否は、治療期間中の対応に大きく影響されます。
弁護士に事前に相談をしておけば、将来の損害賠償請求を見据えて、その時々にベストな対応ができるようにアドバイスを受けることができます。
(まとめ)
高次脳機能障害の治療方法による損害賠償への影響 | 脳神経外科にかかることが後遺障害等級認定の面で重要 自由診療の場合は、治療費が高くなる結果、損害賠償額が高額になる |
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後遺障害等級認定のために治療期間中にすべきこととは | 担当医との信頼関係を構築すること、家族が本人の生活を観察しておくこと |
治療期間中に弁護士に相談するべきか否か | 将来を見据えて、その時点で何をしておくべきかが明確になるため、相談をしておくべき |
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